2018年6月18日大阪府北部で発生した地震の被害調査

新着情報

  • 2018年6月22日に山陽新幹線の桁変位制限装置損傷部の調査状況を追記しました.(2018年6月25日22:02)
  • 2018年6月21日に土木学会関西支部調査団として,大阪高速鉄道を訪問し,大阪モノレールの状況を聞き取り調査しました.その情報を追記しました.(2018年6月25日20:40)
  • 同一地点に複数回調査していることから,日付別リンクをやめ,構造物別リンクのみに移行しました.(2018年6月25日20:23)
  • 2018年6月18日,19日の調査をもとに,被害調査HPを公開しました.(2018年6月20日11:17)

サイト概要

2018年6月18日7時58分に大阪府北部で発生した地震(M_JMA 6.1)では,大阪府北部で震度6弱,京都府南部でも震度5強と,関西地方で大きな震度を記録しました.土木学会地震工学委員会地震被害調査小委員会では,情報共有のためのサイトを開設し,調査情報の収集を始めています.ここでは,私が調査した情報の速報を整理します.

構造物別リンク

大阪モノレール 南茨木駅 名神高速道路 枚方水管橋 東海道新幹線 京都大学構内免震建物

大阪モノレール

大阪モノレールは日本で唯一支線を有するモノレールであり,万博記念公園駅付近では,5基の分岐器である桁が動きながら,複雑な線形を処理しています.まだ運休を続けていますが,おそらくその分岐器の確認でしょう,小雨の中,多くの方が作業されていました.

   

この分岐器は,平時であれば次のビデオのように動きます.

from youtube shimasesa-ra

2018年6月21日,土木学会関西支部調査団(団長:清野純史教授(京大))が,大阪高速鉄道株式会社を訪問し,大阪モノレールの被災状況について説明を受けました.その概要は以下の通り.

  • 土木構造物は軽微な被害に留まったものの,分岐器の故障により運行再開の妨げとなっている.分岐器は本線・支線の分岐だけでなく,駅舎内での上下線入れ替え(Uターン)や軌道桁の点検に用いる工作車の出動にも使われるが,これらを直ちに機能させることができなくなった.
  • 工作車も軌道桁を走行するため,停車中のモノレールが障害となる.
  • 工作車はバッテリーにより稼働し,電源を落としたのち,停車中のモノレールの区間まで点検を終わると,いったん工作車を車庫までバックさせ,電源を投入してモノレールを走らせ,車庫にも戻す作業を繰り返すことになる.
  • モノレールは路線下に道路が走っており,不十分な点検でモノレールを走らせると渋滞中の道路にモノを落下させる可能性がある.工作車が走れない状況では,路線下から遠方目視による確認をせざるを得ず,渋滞のために思うように点検を行うことができなかった.

南茨木駅

阪急と大阪モノレールの南茨木駅をつなぐ連絡通路において,商業施設に結ぶ跨道橋の桁端部で段差が発生,通行止めになっていました.

名神高速道路

名神高速道路と大阪府道129号との交差部には下穂積高架橋があり,ロッカー橋脚が桁を支えています.ロッカー橋脚は薄い板状の柱で両端がヒンジとなっており,鉛直力のみを負担する構造で,水平力には両端の橋台,ラーメン橋脚部で抵抗します.耐震補強が実施されており,この高架橋では特に問題なし.

枚方水管橋

ニールセンランガー橋.地震直後,水管から噴水している様子が報道されていた橋です.ネットでは「水道管破裂!」と書かれていましたが,映像と照らし合わせると空気弁のところからの漏水のように思われます.管や補剛アーチ,その他構造には特に損傷見られません.

  

東海道新幹線高架橋

茨木から高槻まで,新幹線高架橋沿いにチェックしながら移動しました.耐震補強がしっかりされており,特に変状は確認しませんでした.

山陽新幹線高架橋

新大阪駅から少し西に進んだ国道176号を越える跨道橋において,桁の変位制限装置の取付部が破損,コンクリートが落下している報告があります.

https://twitter.com/MzbAnd より転載

2018年6月22日に現地を調査しました.調査時点では既に破損した変位制限装置は取り外され,欠けた横ばり部がモルタル補修されています.また,元の変位宣言装置位置の奥に,仮の変位制限構造が設置されている状況が確認できます.現地は鉄道在来線を国道176号の跨線橋が越え,その上を新幹線高架橋が越えています.大きな斜角を有する桁のため,鋭角部に変位制限装置が設置されており,斜橋の回転挙動による破損と考えられます.もう一端の変位制限装置には損傷は見受けられませんでした.

京都大学構内の免震構造物

京都大学時計台は創立100周年記念として免震技術により耐震補強がなされました.この他,新設から免震建物が1棟存在しています.京都も震度5強を観測したことから,免震建物が動いたかどうか,調査しました.ジョイント部がわずかに動いた痕跡はあるものの,免震装置が動いた形跡は確認出来ませんでした.

その他

土木インフラを目的に調査しましたが,移動したルートでは外部から分かる建物被害も多くない印象ですが,屋内の被害が多いようです.また,ガス復旧工事があちこちで実施されていました.橋梁等土木構造物の被害は限定的なようですが,ガス・水道ライフライン関係,交通復旧関係の検証が重要だと感じています.

補足情報

日付別の情報も残しておきます.

2018年6月18日(月)

  • 創立記念日で休講ではあるが,通勤途中の路上(京都市左京区)において,最近の京都ではなかったほどの強い震動を感じ,自宅待機.棚の扉が開き,数点落下していた.
  • 鉄道網が運休,また橋梁等については大きな被害が確認されていなかったため,情報収集を中心に,鴨川の橋梁,京都大学時計台(免震建物)の状況を確認.

2018年6月19日(火)

大学キャンパスに着くと,構内のエレベーターが停止状態(20時頃でも回復せず).11時50分頃,博士課程学生とともに研究室を出発し,車にて大阪府北部の土木構造物の状況を確認するため移動.

(Google Mapに加筆,GPSを持参するをの忘れ,手描きでルートを記載しています.)